進学校 AI時代の部活で躍進?
今週、佐々木麟太郎選手の進路が話題になっています。花巻東高校でホームランを量産し、プロ入り確実と言われながら、NPBではなく米スタンフォード大学を選んだ選手です。昨秋はソフトバンクから1位指名、7月13日にはMLBドラフトでマーリンズが指名しました。
おもしろいのは、その指名の理由です。球団の副社長が真っ先に挙げたのは、打撃ではなく「素晴らしい人柄」でした。パワーはその次。目指すのは「野球だけできる人間」ではなく「野球もできる人間」だと本人は言います。球団も、その点を評価しています。
練習のしすぎが、違反になる
文武両道が、アメリカの大学スポーツの決まりです。統括団体のNCAAは、シーズン中の公式練習を週20時間までと定めている。名門でも強豪でも、一律に。超えれば規則違反で、大学が制裁の対象になります。練習不足ではなく、練習のしすぎが違反になる。学業と両立させるための上限です。
もっとも、この上限が完璧に守られているわけではありません。それでも、学業を本気で優先する大学は確かにあり、佐々木選手が選んだのはその筆頭のスタンフォードです。そこで迎えた二年目、本塁打を大きく増やし、チームの主軸になりました。
翻って日本の高校野球は、運動部でも飛び抜けて長い。休日の練習は平均7.7時間、強豪校では12時間も珍しくありません。上限という発想が、そもそも薄いのです。
ただ、その日本にも例外はあります。この夏話題になった、開成と日比谷の一戦。開成が使えるグラウンドは原則、週に一度3時間だけで、「史上最低量の練習で甲子園を目指す」と公言しています。その野球は『弱くても勝てます』という本になり、二宮和也さん主演でドラマにもなりました。日比谷も、限られた時間を効率で使う進学校。神宮での好勝負は、どちらも量ではなく頭で戦う野球でした。
空いた時間で、何を生み出すか
グラウンドの外でも、同じことが言えるかもしれません。子どもの勉強や習い事が伸び悩むと、大人はつい時間を足したくなる。机に向かった時間や通った回数を、成果と取り違える。でも次の一手は、追加とは限りません。何を減らすか、どこに絞るか、いつ休むか。
そして時間は、これから余りはじめます。いろいろなことを、AIが肩代わりを始めた。ところが効率化というのは、これまでたいてい「空いた分に、もっと同じことを詰める」に使われてきました。AIが生む余白も、上限を決めておかなければ、また練習と勉強で埋まってしまう。
増えたぶんの時間で、何を生み出しますか。
参考(いずれも取得日: 2026-07-14)
- 日本経済新聞「佐々木麟太郎、米大学野球2年目は打線の核に 力みなく本塁打増」(2026年5月)
- Full-Count「佐々木麟太郎に迫る「難しい決断」 指名のマ軍幹部が激白」(2026年7月13日)
- 大修館書店 保体編集部ONLINE「練習時間制限の規則は何をもたらすか」(NCAAの週20時間ルール)
- 笹川スポーツ財団「なぜ、野球部の練習は長いのか?」(高校運動部の休日練習は平均7.7時間)
- Full-Count「いまだに根強い日本野球の「長時間練習」への信仰」(強豪校では休日12時間の練習も珍しくない)
- GetNavi web「週1回3時間しか練習できない超進学校・開成高校野球部は「下手なまま勝つ」!」(練習量・打撃特化の戦術)
- スポーツ報知「開成VS日比谷の超進学校対決 「史上最低量の練習で甲子園」対「明るく・楽しく・軽快に」」(2026年7月・開成の方針と両校対戦)
- 東京都立日比谷高等学校「硬式野球部」(文武両道・限られた時間での効率練習)
- 新潮社「髙橋秀実『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』」(2014年に二宮和也主演でドラマ化)